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430mhz 1kw SSPA (8)

高調波のレベルを再度測定しなおしてみました。またパワー測定にはBIRD43を併用してみました。

1KW出力時

1000W_20171107.png20171107_1kw.png

500W(弱)出力時

500W_20171107.png20171107_500w.png

 昨日アップした高調波の特性と高次(3次以上)高調波の出方が違っています。昨日のデータとの違いはPAの出力端と方向性結合器の入力端の間にBIRD43を挿入している事です。データ的には相対的に思ったほど高調波のレベルは高くないようです。2次高調波のレベルは昨日のデータと値自体はほぼ同じですが、3次高調波以上の高次高調波のレベルが違っています。理由として考えられるのは使用している方向性結合器が1GHzまでの帯域の物ですので、高域周波数帯では結合量が仕様(20dB)通りではないと思われるため実際のレベルを表してはいない事と、PA出力端にBIRD43を挿入していますので高域周波数帯でPA負荷が50Ωよりずれたために高調波レベルにも影響が出ているのかもしれません。しかし、現実的には2次、3次あたりまでの高調波のフィルタリング能力が(それより高次はそれなりの減衰量が確保できるため)問題になります。

さてここまで実験を進めてきて大問題が出てきました。

下記は出力合成器のサーモビューでの温度測定結果です。この時の出力は750W程度です。combiner_temp_20171107.png

2合成後の出力ライン部分はそうでもないのですが2合成部分が200℃を超えてしまっています。パターン面は金属なので正確な温度が測れていませんがPCB部分の温度が200℃超えていますので、当然パターン面もという事です。ただし、1000W出力での測定時でもPCBの焼損やパターンの剥離などが起きている訳ではないのですが、いずれにしても高温すぎます。また、発熱によってこの部分のロスも増加しますので、出力も徐々に低下してくるという事にもなります。

上記のデータはオリジナル状態であり、この後にPCB裏面とヒートスプレッダ間にサーマルグリスを塗布した場合には約50℃程度の温度低下が確認できました。塗布したサーマルグリスはサンハヤトのSCH-20ですが、別の評価でこのグリスよりも熱伝導率の高いグリスもありますので、そちらでも今後実験をしてみます。(ただし、液体金属は場所的に無理と思われます)PCB厚を薄くした方が放熱という観点からはベターと思われますが、同じ誘電率の基板の場合パターン幅が狭くなってしまいますので、この辺をどう考えるかという事も検討項目ですね。

また、上記部分に強制的に冷却風を当てると更に50℃程度の温度低下が実現できますので、実際の運用時には冷却用のファンの併用も考える必要がありそうです。

 

近況

  • 2017/11/16 14:32
  • カテゴリー:雑記

ここの所本業の方がちょっと忙しくて432MHzのSSPA開発が進んでいません。というか、発熱対策に四苦八苦しており根本的にPCB材質を変えるか(FR4→テフロン系のPCB)、アンプの構成自体を考え直すか(500Wx2合成→1KWPA)悩んでいます。

また、プロジェクトメンバーの方がスウェーデンのアマチュア無線家の方とこのSSPAの話をされているのですが、その中で効率の話が出てきています。現在入手可能なSSPA(ヨーロッパのメーカー製)が効率70%程度(どのような使用条件かは不明ですが)との事で、そういう話を聞くとこちらももう少し効率を上げたい所ですがPAユニット~SSPA出力端までの損失(合成損失、LPFの挿入損失、同軸リレーや接続ケーブルの挿入損失、等々)を考えるとSSPAとしての総合効率で70%は通常のリニアモードのPAでは非常に厳しいのでは?と考えています。勿論、最新のLDMOS製品のデータシートスペックでは単体でのドレイン効率>70%なんて記載されていますけどね。

最新の>1KWのLDMOSを使えば(高価ですけど)上記の電力合成器の発熱問題(&挿入損失)や効率の点では改善されるかもしれませんが、今回のSSPAの試作はCWでの連続運用を目標にしているので、1デバイスで1KW動作はSSBやモールス信号などの間欠動作や短時間のCW(デバイスメーカーのテスト)では大丈夫かもしれませんが、ディジタル通信におけるCW連続動作では整合回路の部品が電力的に持たないような気がします。またヒートスポット(LDMOS)はヒートスプレッダ上でなるべく分散された方が放熱には有利だと考えています。放熱は半導体デバイスを使う上では非常に需要なファクタであり、半導体の長期信頼性はジャンクション温度に依存するといっても過言ではありません。

さてさて、どうしたものか?

430mhz 1kw SSPA (9)

出力電力合成器の発熱問題で四苦八苦していますが、とりあえず現状をアップしておきます。

使用PCBはFR4の1.6mm厚の物銅箔厚は35umで、これはコストを抑えるために選択しています。実際432MHz程度の周波数帯であれば誘電体損自体はFR4でも問題ないと判断していますが、銅箔厚は70umの方が良かったと思います。

下記データの測定電力は500W CWです。1KW出力時のデータを測定したい所です(PAの能力的には出せる)が、基板の発熱が大きすぎるので無理はしていません。先日の2合成時の特性データは1KW以上まで出力電力を測定していますが、自動測定ですので時間的には短時間で済んでいます。

温度を低下させるためにオリジナル状態からPCB裏面にサーマルグリスを塗布した場合の温度変化です。計測温度は動作させてから数分後でほぼ温度が一定になった時の物です。ただし、この測定温度は使用しているヒートシンクの放熱能力にもよると思われます。当実験は強制水冷で、測定時水温35℃前後です。また、合成器下部のヒートスプレッダは5mm厚の銅板で、合成器部分の直下には水冷銅板はありません。

 初期状態combiner-heat-500w-1.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(SCH-20)を塗布

combiner-heat-500w-2.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(MX4)を塗布

combiner-heat-500w-3.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(MX4)+PCBパターン面にハンダを盛り銅箔厚を厚くしたcombiner-heat-500w-4.PNG

各サーマルグリスの熱伝導率は本ブログの別エントリーを参照してください。

一般的なFR4のTg(ガラス転移温度)は約130℃ですので、サーマルグリス+PCB銅箔厚の増加でも500W CWで限界という感じです。

さらにPCB上面に強制的に風を当てた場合です。この状態では出力のピックアップをPCB上の50Ωパターンでは引き出さず、直接セミリジットケーブルで後段のLPFに接続しています。

comb-cooling-500W.PNG

 出力にLPF(W7PQL氏製作のテフロン基板の物)を挿入して測定しました。LPFはアルミ製のヒートシンクに実装しています。

LPF-cooling-500W.PNG

パターン面へ風を当てる事で放熱に寄与できるようで基板面の温度が更に低下したので、気を良くして出力を700Wまで上げてみました。

comb-cooling-700W.PNG

あら。。。

LPF-cooling-700W.PNG

そんなに甘くなかったようです。一気に温度が上昇してしまいました。LPFの発熱は殆ど問題は無いようですが、これが基板材質の問題(誘電体損、熱伝導率)なのか、基板誘電率からくるパターン幅の問題(銅損)なのかの切り分けが必要です。多分双方影響していると思われますので各種PCB材料の比較をしてみました。

pcb_hikaku1.png

この表を見ると確かにテフロン基板は高周波向けと呼ばれているだけあって、損失は少ないし、低誘電率によってパターン幅を広くできるなどのメリットがありますが、逆にPCB材料としての熱伝導率は最悪です。という事は同一基板厚であれば放熱という観点(ここでは基板厚方向の放熱)では最近主流になってきたR4350Bなどの方がバランスが良いようです。6035HTCは低損失且つ非常に良い熱伝導率ですが、基板自体が非常に高価でとても普通には使えません。

また、そもそもこういった大電力回路をマイクロストリップラインで製作して良いのか?という疑問も沸いてきました。マイクロストリップラインの場合パターン上面は空気ですので、放熱は空気への放射放熱しかありません。線路近傍にグランドパターンを設けてサーマルビアホールで放熱の手助けをするというのも1つの方法と思いますが、いっその事ストリップライン構造にしてパターン上面の放熱を誘電体を通してヒートシンク(ケース)で放熱という事も考え始めました。実際市販の大電力用のカプラなどはこの方法と思います。

430mhz 1kw SSPA (10)

SSPAの出力側に使用予定の同軸リレーを入手できたので特性を実測しました。

メーカーの仕様です。

CX600N_spec.PNG

 

外観写真

CX-600.png

測定データ

CX-600_S21.png

菅面データで『S11』=入力(コムポート)のリターンロス、『S21』=入力~オープンポート間挿入損失、『S31』=入力~クローズポート間挿入損失、『S32』=切り替えポート間のアイソレーションです。

挿入損失は仕様では0.15dB(max)@500MHzとなっていますが、実測では0.06dB@432MHzですのでとても優秀です。またポート間アイソレーションは仕様では37dB(min)@500MHzですが、同様に実測では35~36dBですのでほぼ仕様の通りです。入力のリターンロスは29.8dBで、VSWRに変換すると1.07となるので仕様の1.15(max)に入っています。

これらの実測データでPAユニット~SSPA出力端までのトータル損失を各々計算した場合、少し多めに見て0.1dB(同軸リレー)+0.4dB(電力合成器+引き出しケーブル込み=本ブログのエントリーNo6,7を参照)+0.2dB(LPF)で0.7dBのロスとなり実に17.5%の出力電力のロスとなりますので、1KWをキッチリ出力するためにはPAユニットでは各々600W程度出力しなければならない事になります。

電力合成器での損失をもう少し減らさないと1KW出力は厳しそうです。発熱の件も考慮して基板材質の変更でこのロスが低減できれば良いのですが。。

マイクロウェーブ展2017

  • 2017/12/01 14:56
  • カテゴリー:雑記

パシフィコ横浜で開催されているマイクロウェーブ展2017に行ってきました。

毎年変わり映えしないと言えばその通りですが、昔の知り合いとの年に1度の再会などもあり、最近はそちらがメインになりつつあります。

興味のあるRF高出力デバイスなども以前は携帯電話基地局用がメインだったのですが、今年は各社ISM用途などにも力を入れているようで、高価だったGaNデバイスも安価な製品がリリースされてきているようです。1GHz~2.5GHzの高出力SSPAはGaNの時代かもしれませんね。当ブログでも現在のプロジェクトの次にはGaN SSPAの実験も面白いかなと考えています。

さて、会場でお会いできた何人かの方々には当ブログを見ているよと教えていただき、『見ている人もいるんだなぁ』と少しやる気にはなっております。『コメントなどを書き込んでください』ともお願いしましたが、まぁ色々とあるようです。

まったくマイクロウェーブ展とは関係の無い話でしたが、今年もあと1ヶ月になってしまいましたので、皆様も風邪などひかないようにご注意ください。

 



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