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エントリー

2017年11月の記事は以下のとおりです。

430mhz 1kw SSPA (10)

SSPAの出力側に使用予定の同軸リレーを入手できたので特性を実測しました。

メーカーの仕様です。

CX600N_spec.PNG

 

外観写真

CX-600.png

測定データ

CX-600_S21.png

菅面データで『S11』=入力(コムポート)のリターンロス、『S21』=入力~オープンポート間挿入損失、『S31』=入力~クローズポート間挿入損失、『S32』=切り替えポート間のアイソレーションです。

挿入損失は仕様では0.15dB(max)@500MHzとなっていますが、実測では0.06dB@432MHzですのでとても優秀です。またポート間アイソレーションは仕様では37dB(min)@500MHzですが、同様に実測では35~36dBですのでほぼ仕様の通りです。入力のリターンロスは29.8dBで、VSWRに変換すると1.07となるので仕様の1.15(max)に入っています。

これらの実測データでPAユニット~SSPA出力端までのトータル損失を各々計算した場合、少し多めに見て0.1dB(同軸リレー)+0.4dB(電力合成器+引き出しケーブル込み=本ブログのエントリーNo6,7を参照)+0.2dB(LPF)で0.7dBのロスとなり実に17.5%の出力電力のロスとなりますので、1KWをキッチリ出力するためにはPAユニットでは各々600W程度出力しなければならない事になります。

電力合成器での損失をもう少し減らさないと1KW出力は厳しそうです。発熱の件も考慮して基板材質の変更でこのロスが低減できれば良いのですが。。

430mhz 1kw SSPA (9)

出力電力合成器の発熱問題で四苦八苦していますが、とりあえず現状をアップしておきます。

使用PCBはFR4の1.6mm厚の物銅箔厚は35umで、これはコストを抑えるために選択しています。実際432MHz程度の周波数帯であれば誘電体損自体はFR4でも問題ないと判断していますが、銅箔厚は70umの方が良かったと思います。

下記データの測定電力は500W CWです。1KW出力時のデータを測定したい所です(PAの能力的には出せる)が、基板の発熱が大きすぎるので無理はしていません。先日の2合成時の特性データは1KW以上まで出力電力を測定していますが、自動測定ですので時間的には短時間で済んでいます。

温度を低下させるためにオリジナル状態からPCB裏面にサーマルグリスを塗布した場合の温度変化です。計測温度は動作させてから数分後でほぼ温度が一定になった時の物です。ただし、この測定温度は使用しているヒートシンクの放熱能力にもよると思われます。当実験は強制水冷で、測定時水温35℃前後です。また、合成器下部のヒートスプレッダは5mm厚の銅板で、合成器部分の直下には水冷銅板はありません。

 初期状態combiner-heat-500w-1.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(SCH-20)を塗布

combiner-heat-500w-2.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(MX4)を塗布

combiner-heat-500w-3.PNG

PCB~ヒートスプレッダ間にサーマルグリス(MX4)+PCBパターン面にハンダを盛り銅箔厚を厚くしたcombiner-heat-500w-4.PNG

各サーマルグリスの熱伝導率は本ブログの別エントリーを参照してください。

一般的なFR4のTg(ガラス転移温度)は約130℃ですので、サーマルグリス+PCB銅箔厚の増加でも500W CWで限界という感じです。

さらにPCB上面に強制的に風を当てた場合です。この状態では出力のピックアップをPCB上の50Ωパターンでは引き出さず、直接セミリジットケーブルで後段のLPFに接続しています。

comb-cooling-500W.PNG

 出力にLPF(W7PQL氏製作のテフロン基板の物)を挿入して測定しました。LPFはアルミ製のヒートシンクに実装しています。

LPF-cooling-500W.PNG

パターン面へ風を当てる事で放熱に寄与できるようで基板面の温度が更に低下したので、気を良くして出力を700Wまで上げてみました。

comb-cooling-700W.PNG

あら。。。

LPF-cooling-700W.PNG

そんなに甘くなかったようです。一気に温度が上昇してしまいました。LPFの発熱は殆ど問題は無いようですが、これが基板材質の問題(誘電体損、熱伝導率)なのか、基板誘電率からくるパターン幅の問題(銅損)なのかの切り分けが必要です。多分双方影響していると思われますので各種PCB材料の比較をしてみました。

pcb_hikaku1.png

この表を見ると確かにテフロン基板は高周波向けと呼ばれているだけあって、損失は少ないし、低誘電率によってパターン幅を広くできるなどのメリットがありますが、逆にPCB材料としての熱伝導率は最悪です。という事は同一基板厚であれば放熱という観点(ここでは基板厚方向の放熱)では最近主流になってきたR4350Bなどの方がバランスが良いようです。6035HTCは低損失且つ非常に良い熱伝導率ですが、基板自体が非常に高価でとても普通には使えません。

また、そもそもこういった大電力回路をマイクロストリップラインで製作して良いのか?という疑問も沸いてきました。マイクロストリップラインの場合パターン上面は空気ですので、放熱は空気への放射放熱しかありません。線路近傍にグランドパターンを設けてサーマルビアホールで放熱の手助けをするというのも1つの方法と思いますが、いっその事ストリップライン構造にしてパターン上面の放熱を誘電体を通してヒートシンク(ケース)で放熱という事も考え始めました。実際市販の大電力用のカプラなどはこの方法と思います。

近況

  • 2017/11/16 14:32
  • カテゴリー:雑記

ここの所本業の方がちょっと忙しくて432MHzのSSPA開発が進んでいません。というか、発熱対策に四苦八苦しており根本的にPCB材質を変えるか(FR4→テフロン系のPCB)、アンプの構成自体を考え直すか(500Wx2合成→1KWPA)悩んでいます。

また、プロジェクトメンバーの方がスウェーデンのアマチュア無線家の方とこのSSPAの話をされているのですが、その中で効率の話が出てきています。現在入手可能なSSPA(ヨーロッパのメーカー製)が効率70%程度(どのような使用条件かは不明ですが)との事で、そういう話を聞くとこちらももう少し効率を上げたい所ですがPAユニット~SSPA出力端までの損失(合成損失、LPFの挿入損失、同軸リレーや接続ケーブルの挿入損失、等々)を考えるとSSPAとしての総合効率で70%は通常のリニアモードのPAでは非常に厳しいのでは?と考えています。勿論、最新のLDMOS製品のデータシートスペックでは単体でのドレイン効率>70%なんて記載されていますけどね。

最新の>1KWのLDMOSを使えば(高価ですけど)上記の電力合成器の発熱問題(&挿入損失)や効率の点では改善されるかもしれませんが、今回のSSPAの試作はCWでの連続運用を目標にしているので、1デバイスで1KW動作はSSBやモールス信号などの間欠動作や短時間のCW(デバイスメーカーのテスト)では大丈夫かもしれませんが、ディジタル通信におけるCW連続動作では整合回路の部品が電力的に持たないような気がします。またヒートスポット(LDMOS)はヒートスプレッダ上でなるべく分散された方が放熱には有利だと考えています。放熱は半導体デバイスを使う上では非常に需要なファクタであり、半導体の長期信頼性はジャンクション温度に依存するといっても過言ではありません。

さてさて、どうしたものか?

430mhz 1kw SSPA (8)

高調波のレベルを再度測定しなおしてみました。またパワー測定にはBIRD43を併用してみました。

1KW出力時

1000W_20171107.png20171107_1kw.png

500W(弱)出力時

500W_20171107.png20171107_500w.png

 昨日アップした高調波の特性と高次(3次以上)高調波の出方が違っています。昨日のデータとの違いはPAの出力端と方向性結合器の入力端の間にBIRD43を挿入している事です。データ的には相対的に思ったほど高調波のレベルは高くないようです。2次高調波のレベルは昨日のデータと値自体はほぼ同じですが、3次高調波以上の高次高調波のレベルが違っています。理由として考えられるのは使用している方向性結合器が1GHzまでの帯域の物ですので、高域周波数帯では結合量が仕様(20dB)通りではないと思われるため実際のレベルを表してはいない事と、PA出力端にBIRD43を挿入していますので高域周波数帯でPA負荷が50Ωよりずれたために高調波レベルにも影響が出ているのかもしれません。しかし、現実的には2次、3次あたりまでの高調波のフィルタリング能力が(それより高次はそれなりの減衰量が確保できるため)問題になります。

さてここまで実験を進めてきて大問題が出てきました。

下記は出力合成器のサーモビューでの温度測定結果です。この時の出力は750W程度です。combiner_temp_20171107.png

2合成後の出力ライン部分はそうでもないのですが2合成部分が200℃を超えてしまっています。パターン面は金属なので正確な温度が測れていませんがPCB部分の温度が200℃超えていますので、当然パターン面もという事です。ただし、1000W出力での測定時でもPCBの焼損やパターンの剥離などが起きている訳ではないのですが、いずれにしても高温すぎます。また、発熱によってこの部分のロスも増加しますので、出力も徐々に低下してくるという事にもなります。

上記のデータはオリジナル状態であり、この後にPCB裏面とヒートスプレッダ間にサーマルグリスを塗布した場合には約50℃程度の温度低下が確認できました。塗布したサーマルグリスはサンハヤトのSCH-20ですが、別の評価でこのグリスよりも熱伝導率の高いグリスもありますので、そちらでも今後実験をしてみます。(ただし、液体金属は場所的に無理と思われます)PCB厚を薄くした方が放熱という観点からはベターと思われますが、同じ誘電率の基板の場合パターン幅が狭くなってしまいますので、この辺をどう考えるかという事も検討項目ですね。

また、上記部分に強制的に冷却風を当てると更に50℃程度の温度低下が実現できますので、実際の運用時には冷却用のファンの併用も考える必要がありそうです。

 

430mhz 1kw SSPA (7)

さて、2合成での合成実験をやってみました。

 グラフ中に各ユニット(AMP-1およびAMP-2)の特性と2合成時のパルス測定時、およびCW測定時の入出力特性をプロットしています。パルス信号はパルス幅=200μS/パルス繰り返し周期=1mSのデューティ=20%です。2combined-1.png

この特性を単純にみると、かろうじて入力電力10.5W時に目標の1KWは達成できるようですが、実際にはこの後段にLPFと同軸リレーの挿入損失が入りますのでSSPAとしての出力電力は更に低くなってしまいます。また、1KW出力時のゲインコンプレッションは約3dBですので、この領域ではリニアアンプとしての使用はできません。モールスもしくはフルキャリアでのディジタル通信専用です。仮にSSBなどでの運用に使用する場合にはP1dBで約800Wです。

さてもう少し詳細に上記データを見ていきましょう。CWでの2合成出力=1KW時の入力電力は10.5Wと書きましたが、各アンプユニットには入力の2分配器で2分配(均等分配されている事)されたドライブ電力が加わっています。各ユニットの単体データでは入力電力が10.5/2=5.25Wでは600W弱、生データでは580W程度となっています。仮に出力合成器のロスが無いと仮定すると580x2=1160Wの出力電力が得られなければなりませんが、実測された出力電力ではこれが1000Wです。この差が出力合成器(実際には実験用アンプから出力電力ピックアップ用の方向性結合器までの引き出しケーブルの挿入損失も加わります)の挿入損失(合成損失)という事になります。単純に計算すると約0.65dBです。前回のブログ記事でのSSPAの挿入損失の想定ではこの出力合成器の挿入損失は0.2dBとして計算していますので、現状では0.45dBもロスが多い事になります。

しかし実際には入力分配器の挿入損失も存在します。上の計算では入力分配器のロスは考慮していません。下記に今回使用している入力の2分配器の仕様を示します。

anaren_spec.PNG

 挿入損失が仕様上の最大値ですが0.36dBもあります。さすがにこれは最大値ですので、こんなには無いと思いますが、0.2dB程度はあるかもしれません。更に振幅のアンバランスも±0.15dBの差(最大では0.3dBのレベル差という事)があります。単純計算ですが、入力分配器の挿入損失を0.2dB、振幅のアンバランスを0.2dB(約5%)として各アンプユニット(AMP-1およびAMP-2)の入力電力を計算すると、10.5W(40.2dBm)入力時に各ユニットに均等分配された電力は(40.2-0.2)-3で37dBmとなります。この段階で各ユニット出力は生データから出力電力がは約560Wとなっていますので2合成すると1120Wとなります。更に分配器の分配アンバランス=0.2dBを加味すると、片側ユニットは最悪値として5%(2.5W)低下した時の出力=530W程度となります。この場合出力合成器では低い方の電力に合わされますので、もう一方のユニットが仮に530W以上出力されていても530x2=1060Wの合成出力となります。こうなると出力合成器の挿入損失は約0.25dBという計算結果になりますが、さてさて本当にこの通りなのか?ですね。

さらに、現状に問題点も見えてきました。

出力側整合回路の調整用、DCカット用キャパシタ(ATC社製100B)の温度が高くなりすぎてしまいます。その結果整合回路の定数が変化しますので、飽和特性に変化が出てきています。上記のグラス中のパルス測定時の特性で飽和電力が伸びているのは、この整合用キャパシタの温度による容量変化が少ないからと思われます。本来であれば高熱伝導基板などを使えれば良いのですが、こういったPCBは非常に高価なため簡単には使う事ができません。

現状では120℃の温度ラベルが変色してしまいますので、少なくともそれ以上には温度は上がっています。長期信頼性を考えれば100℃以下にしたい所ですが、アマチュア向けの間欠動作ですので100℃前後までは持っていきたいと思います。

RIMG0344.png

 もし飽和領域での出力特性に整合用キャパシタの温度特性が影響を与えているとすると放熱を強化する事によってSSPA自体の出力特性は更に改善できるかもしれません。目標はSSPA装置出力端で1KWですので、もう少し飽和領域で出力を伸ばしたい所です。

 最後に現段階での高調波特性です。1KW出力時の物ですが、アンプユニット自体が飽和領域で動作していますので、2次高調波レベルが高くなっています。現在直読で2次高調波が-50dBc程度ですが、出力にLPFは入れていませんので今後LPF込みでのデータも取得します。また同様にドライバーアンプ~被測定PA間にも現在手持ちにフィルターが無いため高調波対策はしていませんので、実際にはもう少し良い値かもしれません。アンプユニット単体の高調波特性よりも良いので、出力合成器の周波数特性も関係しているのかもしれません。

 copy182.png

 

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