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カテゴリー「SSPA」の検索結果は以下のとおりです。

430mhz 1kw SSPA (4)

さて現時点での単体PAのRF特性です。

Proto_rev11_InOut-board2.png

Proto_rev11_gain-board2.png

データシートでは一応450Wのデバイスですので、P1dBで判断すればほぼ特性は満足している事になります。ただし、今回は前記したようにリニアアンプとしての使用を目的としていないのと、2合成出力(出力LPFの挿入損失込み)で1KWを目標にしていますので、よりコンプレッションのかかった所で動作させる事を想定しています。しかし、実際問題として出力ラインのロス(合成器、LPF、同軸リレー、配線ケーブル)などを総合すると1KW出力はハードルが高いと思われます。きっちり1KW出すためには600Wのデバイスを使用する必要がありそうです。

安全圏として出力を550W程度に設定した場合、出力合成器のロスが0.2dB、LPFの挿入損失が0.2dBとして、この部分だけで約10%の電力が損失してしまいます。実際には上記したように他にもロスファクタがありますので、デバイス的には600W以上で安定的に連続動作ができないといけないという事になります。

 今回は冷却には余裕がある筈ですので、P2dB~P3dB程度で実験を実施します。

 

高調波特性です。

Proto_rev1_harmonics-board2.png

出力約600W時の物です。2次高調波が約-35dBc程度ですので計算上では少し余裕を持てば7次のLPFで良い事になります。しかし、本来であればプッシュプル構成ですので偶数次高調波のレベルが奇数次高調波より低くなる筈ですが、2次高調波に関しては何故か高いレベルとなっています。(4次、5次の関係を見ればちゃんと偶数次の方が低いです)

上記の理由として、今回の測定では使用しているドライバーアンプの高調波特性があまり良くなく、下記のような特性ですのでそれがPAの2次高調波レベルに影響を与えている可能性もありますのでPA単体の高調波特性はもう少し良いかもしれません。この点は追ってドライバー段の出力にLPfを挿入して実験してみます。(まだLPFには手が回っていないので。。)

Proto_rev1_harmonics-driver.png

 

 さて現在は最初に書いたようにPCBパターンにグランドパターンがあった方が良いのか、無くても特性には関係無いのかのデータ取得をしています。また、バランの長さも当然ですが特性に差がでますが、これまた計算結果通りの結果にはならないようです。バランの外側導体はPCBのグランドに影響されますし、またコイル状にすると巻き線間での寄生容量の影響も受けます。現在の実機ではシュミレーション結果でのバラン長よりも長くした方が良い結果になっていますので、この辺も追加で実験してレポートします。

 

430mhz 1kw SSPA (5)

プッシュプル増幅器には必須のバラン(180°位相変換器)とPAのIRLがRF特性(主に飽和特性)に与える影響について少し実験してみました。

180°位相シフトさせるためには色々な手法があります。例えば、180°位相が遅れる位相ラインをプッシュプルペアの片側のラインに追加する等です。ただし、この方法は高周波数で使用しないとマイクロストリップラインの物理長(25Ω→50Ωへのインピーダンス変換のためのアディショナルな1/4λ線路が必要になるため)が長くなってしまうため実装面積が大きくなってしまいます。

他には一般的に『バラン』と呼ばれるトランス方式の物です。本来はバランを作成するためには3本の線路が必要です。テキスト通りPAにも2本の同軸ケーブルを向かい合わせに接続して製作している物も多々あります。

しかし、今回は簡易的に1本の同軸ケーブルで入出力バランを構成しています。

通常バランを作成する場合には線路長は1/4λとします。今回はセミフレキシブルケーブルを使用していますので、ケーブル内の絶縁体はPTFEで誘電率ε=2.1となり、波長短縮率は約69%となります。432MHzで計算すると約120mmの長さという事になります。実際にはバランの外側導体はPCBのグランドパターンの影響を受けると思いますし、バランをPCB上のパターンにハンダ付けする場合にハンダ付け部分の長さはどう考えるのか等、色々と悩む部分でもあります。このバランの長さがどの程度PAの特性に影響を与えるか検証した結果です。

まず主に影響するであろう出力側バラン長を60mm(計算結果の半分の長さ=1/8λ)~ 140mmまで20mmステップで変えてみました。60mmとしたのは、以前実験した時に1/8λ程度でもアンプ自体は動作するのですが、理想値からどの程度特性劣化があるのかの確認です。今回のPAはUHF帯用でバラン長もさほど長くないので特に問題でありませんが、VHF帯用(50MHz/144MHz)などではバランの物理的な処理に困りますのでついでの確認です。ただし50MHz以下はフェライトコアを使った広帯域トランスですので、また違う世界ですね。

output_balun.png

このデータではバラン長の最適値(計算値)=120mmで出力500W(大体P1dB+α近辺です)で比較した場合、バラン長=60mm(1/8λ)では約50W程度の出力低下が見られます。ゲインも全体的にそれなりに低いようです。

しかし、最適値の120mmに対して線路長はクリチカルか?と言われれは、そうでもないようで、±20mm程度の差であれば特性的には誤差範囲ではないかと思われます。バランの実装上40mmの長さはレイアウトを考えると結構効いてきますで、±20mm(40mm長)の長さの範囲で最適なレイアウトを選択しても良いと思われます。

同様に出力側のバラン長を最適値(120mm)に固定して入力側バランの長さを変えてみました。

Input_balun.png

 入力側に関しては出力側と違って長さの影響はほとんど確認できませんでした。ただし、今回使用したデバイスがデータシートスペックでもIRLが非常に悪いため、その影響かもしれません。実際、IRLの数値データも取得しているのですが、出力の増加(入力が増える)にしたがってIRLが悪くなっていく状態です。調整時にネットワークアナライザで小信号でのIRLを調整をしているための問題と思われます。最終的には小信号時ではなく大信号でIRLが最良となるようにしなければならないのですが、まだそこまで手が回っていません。IRLの目標は一般的には-10dB以下(できれば-17dB程度)が良いのですが。RF LDMOSの場合にはそこまでシビアに考える必要は無いと思っています。今回のPAの場合には実際には入力には2分配器は入りますので、ドライブ用の無線機の負荷には入力分配器のIRLが見えます。実際には入力リレーや必要に応じて追加する入力アッテネータを含んでのIRLがPA自体のIRLとなります。

と、ここまで書いたのですがIRLの差による特性の差異が気になったので、簡単に入力側に調整用に追加(回路シュミレーションでは入っていない)した20pFの有無、および位置をずらした場合のデータを取ってみました。

Input_match.png

『オリジナル』というのは上の方でデータ取得している状態です。調整用の20pFの位置などを動かすと、PAのIRLが変化するため被測定PAとSG間に入っているドライバー用アンプ(自作のアンプですが広帯域設計のためアイソレータが入っていません)の負荷インピーダンスが変化するためSGからの出力は同じでもドライバーアンプの出力が変わってしまっているのはご愛敬です。

IRLの変化としてまとめたグラフです。

Input_IRL1.png

IRL特性的にはさんざんな状態ですが、下記の事が再認識できます。

1.IRLは良い方がGainも高い → 黄色線の特性が顕著

2.入力(出力)に対してのIRL特性が飽和特性に影響を与える

  →ピンク色線ですが、IRLの絶対値は悪いですが出力に応じでIRLが悪化してこない。結果、飽和特性はソフトサチュレーション特性である

3.青色線(オリジナル)はIRL特性のように小信号域ではGainも高いが、IRLが悪化してくる領域ではGainも低下してくる。ただし、この状態が1番ドライバーアンプの出力が大きくなる(決して50Ωに整合されているという意味ではありません。)

430mhz 1kw SSPA (6)

現在は試作段階のためPCB上にはレジストはかけておらず、また2種類のパターン(整合回路は同じですが、周囲のグランドパターンの違い)を作成して特性比較をしています。これは、パターン設計者によってグランドの引き回しなどの考え方が違うため、その違いが実際のRF特性のどの程度影響を与えるか?という素朴な疑問からです。ただし、今回の評価はあくまでも50Ωに終端しての実験ですので、実際のアンテナなどに接続された場合での負荷ミスマッチ状態での安定性を見ている訳ではありません。

しかし、今回のSSPAは2合成アンプですので出力合成器である程度のアイソレーションは確保できますので、アンテナでのミスマッチがそのままアンプ負荷に影響を与える事は少ないと思います。

GND_two.png

上記の写真では実際に2合成での評価を実施するために上下のアンプ部分にデバイスを実装していますが、グランドパターンの有り無し評価自体は同一デバイスを各パターンに都度取り付け直してデータ測定をしています。

結果です。

GND_1.png

測定のデータの確度を上げるために4デバイスを測定しています。(No.1~No.4)同一PCBですが、デバイスによて飽和電力は約50W程度違うようですが、これはデバイスの取り付けにネジ留め+リードハンダ付けではなく、テフロンプッシャーで押さえているだけなので、デバイス取り付け時の相対位置やヒートスピレッダへの密着具合の影響による誤差もあると思われます。

上記のグラフは少し見にくいので、測定した4デバイスの平均値をとったものと参考までにドレイン効率をプロットしてみました。

GND_2.png

結果としては、整合回路周囲のグランドパターンではほぼRF特性に違いは出ていない事がわかります。

仮にSSPA出力端で1KWを出力する場合、アンプユニット~出力端までのロスを約0.7dB(合成器:0.2dB+LPF:0.2dB+同軸リレー:0.2dB+ケーブル:0.1dB)と考えた場合、PA単体ユニットでは610W程度出力できなければなりません。今回使用しているデバイスはデータシートスペック上での定格出力は450Wですので、1KW SSPA用としては少し(というか大分)厳しいデバイスです。しかし、実測データでは一応600Wは超えていますので、なんとかなるかもしれません。

ちなみに、本データでは600W出力時のドレイン効率は約60%です。(最近の最新プロセス品では70%などというデバイスもありますが、UHF帯での効率では無い事に注意)したがって、仮に出力ラインに0.7dBのロスがあってSSPA出力が1KW出せたとすると、総合効率は約50%という事になります。

430mhz 1kw SSPA (7)

さて、2合成での合成実験をやってみました。

 グラフ中に各ユニット(AMP-1およびAMP-2)の特性と2合成時のパルス測定時、およびCW測定時の入出力特性をプロットしています。パルス信号はパルス幅=200μS/パルス繰り返し周期=1mSのデューティ=20%です。2combined-1.png

この特性を単純にみると、かろうじて入力電力10.5W時に目標の1KWは達成できるようですが、実際にはこの後段にLPFと同軸リレーの挿入損失が入りますのでSSPAとしての出力電力は更に低くなってしまいます。また、1KW出力時のゲインコンプレッションは約3dBですので、この領域ではリニアアンプとしての使用はできません。モールスもしくはフルキャリアでのディジタル通信専用です。仮にSSBなどでの運用に使用する場合にはP1dBで約800Wです。

さてもう少し詳細に上記データを見ていきましょう。CWでの2合成出力=1KW時の入力電力は10.5Wと書きましたが、各アンプユニットには入力の2分配器で2分配(均等分配されている事)されたドライブ電力が加わっています。各ユニットの単体データでは入力電力が10.5/2=5.25Wでは600W弱、生データでは580W程度となっています。仮に出力合成器のロスが無いと仮定すると580x2=1160Wの出力電力が得られなければなりませんが、実測された出力電力ではこれが1000Wです。この差が出力合成器(実際には実験用アンプから出力電力ピックアップ用の方向性結合器までの引き出しケーブルの挿入損失も加わります)の挿入損失(合成損失)という事になります。単純に計算すると約0.65dBです。前回のブログ記事でのSSPAの挿入損失の想定ではこの出力合成器の挿入損失は0.2dBとして計算していますので、現状では0.45dBもロスが多い事になります。

しかし実際には入力分配器の挿入損失も存在します。上の計算では入力分配器のロスは考慮していません。下記に今回使用している入力の2分配器の仕様を示します。

anaren_spec.PNG

 挿入損失が仕様上の最大値ですが0.36dBもあります。さすがにこれは最大値ですので、こんなには無いと思いますが、0.2dB程度はあるかもしれません。更に振幅のアンバランスも±0.15dBの差(最大では0.3dBのレベル差という事)があります。単純計算ですが、入力分配器の挿入損失を0.2dB、振幅のアンバランスを0.2dB(約5%)として各アンプユニット(AMP-1およびAMP-2)の入力電力を計算すると、10.5W(40.2dBm)入力時に各ユニットに均等分配された電力は(40.2-0.2)-3で37dBmとなります。この段階で各ユニット出力は生データから出力電力がは約560Wとなっていますので2合成すると1120Wとなります。更に分配器の分配アンバランス=0.2dBを加味すると、片側ユニットは最悪値として5%(2.5W)低下した時の出力=530W程度となります。この場合出力合成器では低い方の電力に合わされますので、もう一方のユニットが仮に530W以上出力されていても530x2=1060Wの合成出力となります。こうなると出力合成器の挿入損失は約0.25dBという計算結果になりますが、さてさて本当にこの通りなのか?ですね。

さらに、現状に問題点も見えてきました。

出力側整合回路の調整用、DCカット用キャパシタ(ATC社製100B)の温度が高くなりすぎてしまいます。その結果整合回路の定数が変化しますので、飽和特性に変化が出てきています。上記のグラス中のパルス測定時の特性で飽和電力が伸びているのは、この整合用キャパシタの温度による容量変化が少ないからと思われます。本来であれば高熱伝導基板などを使えれば良いのですが、こういったPCBは非常に高価なため簡単には使う事ができません。

現状では120℃の温度ラベルが変色してしまいますので、少なくともそれ以上には温度は上がっています。長期信頼性を考えれば100℃以下にしたい所ですが、アマチュア向けの間欠動作ですので100℃前後までは持っていきたいと思います。

RIMG0344.png

 もし飽和領域での出力特性に整合用キャパシタの温度特性が影響を与えているとすると放熱を強化する事によってSSPA自体の出力特性は更に改善できるかもしれません。目標はSSPA装置出力端で1KWですので、もう少し飽和領域で出力を伸ばしたい所です。

 最後に現段階での高調波特性です。1KW出力時の物ですが、アンプユニット自体が飽和領域で動作していますので、2次高調波レベルが高くなっています。現在直読で2次高調波が-50dBc程度ですが、出力にLPFは入れていませんので今後LPF込みでのデータも取得します。また同様にドライバーアンプ~被測定PA間にも現在手持ちにフィルターが無いため高調波対策はしていませんので、実際にはもう少し良い値かもしれません。アンプユニット単体の高調波特性よりも良いので、出力合成器の周波数特性も関係しているのかもしれません。

 copy182.png

 

430mhz 1kw SSPA (8)

高調波のレベルを再度測定しなおしてみました。またパワー測定にはBIRD43を併用してみました。

1KW出力時

1000W_20171107.png20171107_1kw.png

500W(弱)出力時

500W_20171107.png20171107_500w.png

 昨日アップした高調波の特性と高次(3次以上)高調波の出方が違っています。昨日のデータとの違いはPAの出力端と方向性結合器の入力端の間にBIRD43を挿入している事です。データ的には相対的に思ったほど高調波のレベルは高くないようです。2次高調波のレベルは昨日のデータと値自体はほぼ同じですが、3次高調波以上の高次高調波のレベルが違っています。理由として考えられるのは使用している方向性結合器が1GHzまでの帯域の物ですので、高域周波数帯では結合量が仕様(20dB)通りではないと思われるため実際のレベルを表してはいない事と、PA出力端にBIRD43を挿入していますので高域周波数帯でPA負荷が50Ωよりずれたために高調波レベルにも影響が出ているのかもしれません。しかし、現実的には2次、3次あたりまでの高調波のフィルタリング能力が(それより高次はそれなりの減衰量が確保できるため)問題になります。

さてここまで実験を進めてきて大問題が出てきました。

下記は出力合成器のサーモビューでの温度測定結果です。この時の出力は750W程度です。combiner_temp_20171107.png

2合成後の出力ライン部分はそうでもないのですが2合成部分が200℃を超えてしまっています。パターン面は金属なので正確な温度が測れていませんがPCB部分の温度が200℃超えていますので、当然パターン面もという事です。ただし、1000W出力での測定時でもPCBの焼損やパターンの剥離などが起きている訳ではないのですが、いずれにしても高温すぎます。また、発熱によってこの部分のロスも増加しますので、出力も徐々に低下してくるという事にもなります。

上記のデータはオリジナル状態であり、この後にPCB裏面とヒートスプレッダ間にサーマルグリスを塗布した場合には約50℃程度の温度低下が確認できました。塗布したサーマルグリスはサンハヤトのSCH-20ですが、別の評価でこのグリスよりも熱伝導率の高いグリスもありますので、そちらでも今後実験をしてみます。(ただし、液体金属は場所的に無理と思われます)PCB厚を薄くした方が放熱という観点からはベターと思われますが、同じ誘電率の基板の場合パターン幅が狭くなってしまいますので、この辺をどう考えるかという事も検討項目ですね。

また、上記部分に強制的に冷却風を当てると更に50℃程度の温度低下が実現できますので、実際の運用時には冷却用のファンの併用も考える必要がありそうです。

 

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