50MHz 1KW+ SSPA(2)
2017.09.06
1.使用デバイスについて

 LDMOSの主要メーカー2社より各々1KW以上の出力のデバイスがリリースされていますが、今回はLDMOS FETとしては初めての65V動作可能品であるNXP社のMRFX1K80Hを使用します。Vdd=65Vで動作可能というのは従来のVMOS FET(MRF150やSD2931などが有名)のVdd=50Vよりも高い電圧で動作可能という事であり、出力整合回路に広帯域トランスを使用した場合の巻き線比 vs. 周波数特性のトレードオフを解決できる可能性を含んでいます。


データシートにはなんとVdd=65V動作時に1800W CW出力だと書かれています。しかし本当に無線通信用途(SSB等)での使用時に1800Wもの出力が出せるのでしょうか?
一般的なリニアアンプでは変調信号のIMD特性から許容できる出力はゲインコンプレッション特性でP1dB程度までが使用範囲と言われています。
 
ゲインコンプレッション特性=リニアリティの参考資料としてデータシートに下記のデータが載っています。



このデータを見る限りでは周波数は27MHzですがVdd=50V時でのP1dBは約800W、Vdd=65Vでも約1150W程度です。
Vdd=65Vで1800WはP5dBとリニアアンプとしては非現実的な領域だと思います。
勿論、リニアリティ=歪特性を無視できるモールス信号での通信や、信号の振幅に情報を含んでいない完全なCWでの運用であれば1800W出力は可能です。

また、このデバイスに限った事ではないのですが、高電圧超高出力のLDMOS FETはIdqがFET ダイサイズに比較して非常に少なく設定されています。
結果、小信号時のリニアリティが悪くなり、上記のグラフのように小信号域でもゲイン特性はフラットになりません。

この辺はIdqを増加させる事である程度は改善できる筈なのですが、その場合無信号時(無線機用アンプとして考えるなら受信時)にも大きなIdqが流れてデバイスが発熱するという事ですので、ゲート電圧を送受信に同期させる等の対応策が必要です。
50MHz 1KW+ SSPA(1)
2017.09.05
2017年のハムフェアに参加しました。

会場を見て回ったのですが以前に比べて自作機器(特にSSPA)の展示などがとても少なくなった印象を受けました。何人かにお話しをお聞きしましたが、自作するための資料などが無いからというお話がありました。

そういう状況ではありますが、高周波高出力デバイスの主力市場であったマイクロ波帯を使う携帯電話アプリケーションが次世代規格では更に高周波数帯となっていくため、今までの2.5GHz以下の周波数帯では主力製品であったLDMOSプロセス品の需要が変わってきました。

 従来からのLDMOS FET製品をメインに製造してきた半導体メーカーは高周波数帯への対応はGaNなどの化合物系デバイスで行う反面、新規の市場に従来のLDMOS FETを投入していく事を模索しているようです。
それはISM(Industrial, Scientific and medical)などの無線通信用途以外のアプリケーションです。
今までこのISM市場はVMOS FETと呼ばれる縦型構造のデバイスが主流でした。
理由はLDMOS FETは構造上高耐圧品を作る事が困難なため、より高出力ではデバイスの負荷インピーダンスの関係で動作電圧を高くできるVMOS FETが有利であったためと、本来LDMOS FETは高周波数向けのプロセスであるためVHF~HF帯の低周波数帯での動作が不安定であった事に起因しています。

また、現在HF帯などの低周波数帯でリニアリティを要求されないアンプにはスイッチングモードPAが多用されており、その場合にはドレインブレークダウン電圧の高電圧は必須要件でした。

しかし、最近になってLDMOS FETの主要メーカーより高電圧動作品がリリースされており、且つHF帯での動作例などもメーカーからレファレンスデザインという形で発表されるようになりましたし、海外ではこれらのLDMOS FETを使ったアンプなども実験や市販されているようです。

 そこで、最新の高電圧LDMOSを使ってアマチュア無線用のSSPAを試作してみる事にしました。とりあえず50MHz帯用としますが、今後144MHz帯~2.45GHz帯のSSPAも試作しようと考えています。まだ完成している訳ではないので、開発状況を含めてアップしていきますので、皆様のご意見、感想などお聞かせいただければ幸いです。

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