サーマルグリス(1)
2017.09.20

最初に計画した評価実験の項目には含まれていませんが、サーマルグリスの違いによる特性の差について少し検証してみました。

 高電力用デバイスの使用時には放熱は非常に大きなファクタであり、最近の高出力デバイスの中にはヒートシンク(ヒートスプレッダ)にハンダ付けする事を推奨、又はハンダ付け実装しか取り付け方法が無いようなパッケージを採用してきています。これはデバイスの出力が大きくなってきたために既存のパッケージの熱抵抗およびパッケージ-ヒートシンク間の熱抵抗が無視できなくなってきた事に起因します。パッケージ自体は以前のCuW合金から最近はCPCなどのより高熱伝導素材へ変わってきています。またパッケージ-ヒートシンク間の熱抵抗を下げるためにシリコン系のサーマルグリス(本来は熱伝導その物を上げるという事ではなく、パッケージ-ヒートシンク間の微細な凸凹による熱抵抗の増加を抑える目的)では限度があるため、より熱伝導率の高い金属による接合(ハンダ付け)という方法を取っているデバイスもリリースされてきています。このハンダ付け実装は接合部分にVOIDなどの問題が発生しなければ熱伝導率を増加させる事で特性改善が見込めますし、フランジ部分の熱抵抗もCPCなどの合金から銅へ置き換える事ができコストダウンも可能になるため一石二鳥でもあります。
 しかし、現実的にはいくらハンダ付けによる熱抵抗の減少による特性の改善が期待できても、アマチュアレベルの工作では非常に実装は難しい物があります。そこで、近年PC用途(CPUの放熱用)として販売されている高熱伝導率のサーマルグリスを使った場合の評価実験を行ってみました。この件は以前から興味があったのですが、なかなか実験した結果などをネットで見つける事ができなかったので自分でやってみました。もし他にも同様の実験をされているところがありましたら、あくまでも1例としてご覧ください。
 比較評価したサーマルグリスです。データ上では熱伝導率は各々約10倍の差があります。また『Liquid Pro』は液体金属であるため当然電気導電性があります。CPUの放熱用途としてはMBの回路のショートを引き起こす電気伝導性には要注意とありますが、ことLDMOS(マウンティングフランジ部分がソース端子)の場合には電気伝導性は逆にメリットになります。また、アルミニウムなどは腐食させるとも注意書きに書かれていますが、これまた高出力デバイスのヒートスプレッダはそもそも銅板などで製作するのが普通ですし、デバイスパッケージも基本的には金メッキ処理がされていますので問題は無いと考えられます。

比較検討したサーマルグリス


 実験は手持ちのデバイスの関係で、先の1.8KW/65V品ではなくUHF帯用450W品を使用しており、このデバイスを50MHzで動作させています。デバイス内部写真の通りUHF帯用内部整合回路をドレイン側に内蔵していますが、50MHz近辺のVHF帯での動作では内部整合回路はほぼ動作しないようで、特に問題なく定格出力を得られています。また、今回の実験はあくまでも各種サーマルグリスによる同一基板、同一デバイスでの特性比較実験として実施しています。
 評価方法はデバイスパッケージを開封し、直接LDMOS FET DIEのジャンクション温度をサーモビューワを用いて温度測定をしています。しかし、反射率の問題で正確な温度は測定できていないと思われますので、これも各サーマルグリス間での特性の差異(相対値として)で見てください。

 測定風景



 デバイス拡大



 評価デバイスの動作条件 (下記条件で一定)
Vdd = 50V
Frequency = 50.00MHz
Input Power = 36.17dBm (基本になるSHC-20で定格出力450Wの時の入力電力)


続く。。

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